【知らないと無効に?】相続放棄と家の片付けの関係|単純承認の落とし穴を解説

目次

はじめに

相続放棄を考えているとき、誰もが一度は迷うのが「家の片付けをしてもいいのか?」という問題です。
一見すると「相続放棄の意思を固めているのだから、少しぐらい整理しても問題ないだろう」と思ってしまうかもしれません。しかし、法律上は注意が必要で、場合によっては相続放棄が無効になり“単純承認”扱いになってしまうリスクがあります。

この記事では、相続放棄と家の片付けの関係を法律の観点からわかりやすく解説し、単純承認の落とし穴に陥らないための注意点と安全な片付け方法を詳しく紹介します。

相続放棄とは?基本の仕組みをおさらい

相続放棄とは、被相続人(亡くなった人)の財産や借金など一切を引き継がない手続きのことを指します。

相続放棄のポイント

  • 手続きは家庭裁判所に申述する必要がある
  • 期限は相続開始(=被相続人の死亡)から3ヶ月以内
  • 相続放棄が成立すると、最初から相続人ではなかった扱いになる
  • プラスの財産もマイナスの財産も両方放棄する(選べない)

不動産や空き家ももちろん相続財産に含まれます。そのため「借金が多いから放棄したい」「空き家を相続しても維持できない」という事情で相続放棄を選ぶ人も少なくありません。

単純承認とは?相続放棄が無効になるケース

「相続放棄をしよう」と思っていても、一定の行為をしてしまうと単純承認(相続を受け入れる意思があったとみなされること)となり、放棄できなくなる可能性があります。

民法921条に規定されている単純承認の典型例

  1. 相続財産を処分したとき
    → たとえば、家の中の家具や貴金属を勝手に売却した場合。
  2. 相続財産を隠したり使い込んだとき
    → 金庫の現金を持ち出す、預金を引き出すなど。
  3. 熟慮期間(3ヶ月)を過ぎたとき
    → 期限までに相続放棄も限定承認もしなければ、単純承認したものとみなされる。

実際の事例

  • 親の家を片付ける際に、価値がある骨董品を売却してしまい、相続放棄を申述しても裁判所に認められなかった。
  • 借金が多いことを知らずに放棄を検討していたが、すでに土地を売却してしまっていたため単純承認扱いになった。

つまり、「片付けのつもり」でも、財産処分と解釈されれば相続放棄ができなくなるのです。

相続放棄と家の片付けの関係

では、家の片付けはすべてNGなのかというと、そうではありません。法律上は**「処分」と「保存行為(管理行為)」**を区別しています。

処分にあたる行為(NG)

  • 家財道具を売却する
  • 家具・電化製品を廃棄する
  • 不動産を賃貸・売却する
  • 貴金属や骨董品を譲渡する

保存行為(OK)

  • 雨漏りや倒壊を防ぐための応急修理
  • 施錠や窓閉めによる防犯対策
  • 腐敗や害虫を防ぐために最低限の掃除
  • 水漏れや火災を防ぐための電気・ガスの停止

つまり、価値のあるものを動かしたり、経済的利益が生じる行為をしなければ片付け自体は一定範囲で可能です。

単純承認にならないための片付け方法

安全にできる片付けの例

  • ゴミや腐敗物の処分(衛生上必要な範囲)
  • 家の鍵をかける、防犯カメラを設置する
  • 雨漏り防止のブルーシート養生
  • 家の写真を撮って現状を記録

避けるべき片付け

  • 通帳・現金・貴金属など価値あるものを処分・使用する
  • 家電や家具をリサイクルショップに持ち込む
  • 建物を取り壊す、リフォームする

大事なのは「管理に必要な最低限にとどめる」ことです。

片付けと相続放棄を両立させる実践ステップ

  1. 相続放棄の申述を最優先
    → 家庭裁判所で手続きしてから片付けを検討する。
  2. 財産調査を行う
    → 不動産登記・預金・負債などの有無を確認。
  3. 弁護士に相談
    → 保存行為か処分行為か判断が難しいケースは専門家に確認。
  4. 必要なら業者に依頼
    → 遺品整理業者は「保存行為の範囲で片付け可能」な場合もあり。

空き家・不動産がある場合の追加注意点

  • 空き家を放置すると「特定空き家」に指定され、固定資産税の増額や行政代執行のリスクあり
  • 相続放棄しても一定期間は管理義務が残る(民法940条)
  • 自治体から「管理してください」と連絡が来ることもある
  • 放置でトラブル化する前に、放棄か活用かを早めに決めることが大切

専門家に相談すべきケース

  • 相続財産に借金があるか不明なとき
  • 空き家や不動産が複数あるとき
  • 相続人が複数いて意見が分かれているとき
  • すでに一部片付けを始めてしまったとき

弁護士に相談すれば「これは保存行為にあたるか」「相続放棄は可能か」を明確にアドバイスしてもらえます。また遺品整理業者も「法律に配慮した整理」をサポートしてくれる会社を選ぶと安心です。

よくある質問(FAQ)

Q1. 相続放棄をしたいのですが、家の掃除機をかけたり、ほこりを取ったりする程度でも問題になりますか?

A. 掃除機やほこり取りなど衛生や管理を目的とした清掃は保存行為にあたり、問題ありません。ただし、家電や家具を処分する・売却するなど財産の価値に影響を与える行為は「処分」とみなされる可能性があるため避けましょう。

Q2. 相続放棄を検討していますが、家の中の貴重品(通帳や現金)は触らない方がいいですか?

A. はい。現金・通帳・貴金属など価値のあるものを動かすと「相続財産の処分」と解釈されるリスクがあります。どうしても必要がある場合は、弁護士に確認してから対応するのが安全です。

Q3. 相続放棄をしても、空き家の管理責任は残るのですか?

A. 民法940条により、放棄しても一時的に管理義務は残ります。放棄後すぐに責任が消えるわけではなく、相続財産管理人が選任されるまで、最低限の管理を行う必要があります。

Q4. 相続放棄をした後に、親の家を勝手に片付けてしまったらどうなりますか?

A. 相続放棄後に財産を処分すると、相続放棄が無効とされ、単純承認扱いになる可能性があります。片付けは必ず「保存行為の範囲」にとどめましょう。

Q5. 相続放棄と遺品整理は同時にできますか?

A. 基本的には、相続放棄を申述してから遺品整理を進めるのが安全です。もし申述前に片付ける必要がある場合は、「処分」ではなく「保存」に該当するかどうかを専門家に確認してください。

Q6. 相続放棄の手続きが終わるまで、家をそのまま放置しても大丈夫ですか?

A. 完全放置はおすすめできません。ゴミや食料が残っていると近隣への悪臭・害虫トラブルが発生することがあります。最低限の清掃・通風・施錠などの管理行為は行ってください。

Q7. 空き家が「特定空き家」に指定されるとどうなりますか?

A. 特定空き家に指定されると、固定資産税が最大6倍に増額される可能性や、自治体による行政代執行(強制的な取り壊し)が行われることもあります。相続放棄を検討中でも、放置せず管理を続ける必要があります。

まとめ|片付けは“やりすぎ注意”!相続放棄を確実に成立させるには

  • 相続放棄を考えているとき、家の片付けには注意が必要
  • 財産を売却・廃棄すると「単純承認」とみなされ、放棄が無効になるリスクがある
  • 保存行為(防犯・衛生・応急処置)の範囲なら片付けは可能
  • 相続放棄と片付けを両立させるには、家庭裁判所への申述+専門家相談が安全
  • 不安なら独断で片付けず、必ず弁護士や専門業者に相談を

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