遺言書はこう書く!法的に有効な書き方とNG例をわかりやすく紹介

目次

はじめに:遺言書の必要性とトラブル回避の重要性

「うちは財産も少ないし、遺言書なんて大げさでは…」と考えている方は多いかもしれません。ところが、相続トラブルの件数は年々増加しており、家庭裁判所に持ち込まれる「遺産分割事件」の実に75%以上は、遺産総額が5,000万円以下です。

つまり、一般的な家庭でも揉める可能性は十分にあるということ。
トラブルの多くは「遺言書がない」または「無効な遺言書」であることが原因です。

遺言書は、自分の財産を「誰に、どのように、何のために」遺すかを明確にするための大切な書類。
正しく書けば、家族を争いから守り、あなたの思いを確実に伝えることができます。

この記事では、法的に有効な遺言書の書き方を、実例・テンプレート付きで詳しく解説します。
特に多くの人が選ぶ「自筆証書遺言」に焦点を当てつつ、ありがちなNG例や注意点も紹介。
これを読めば、あなたもすぐに正しい遺言書を作成できるようになります。

遺言書の基本知識|種類とそれぞれの特徴を理解しよう

遺言書には3つの種類がある

日本の法律に基づいて作成できる遺言書は、以下の3種類です。

遺言書の種類主な特徴作成費用証人の有無家裁の検認
自筆証書遺言自分で全文を書く。2020年以降は法務局で保管可能。無料〜数百円(文具代など)不要必要
(保管制度利用時は不要)
公正証書遺言公証役場で作成。法律の専門家がチェック。数万円〜数十万円2名必要不要
秘密証書遺言内容を秘密にできるが、実務ではあまり使われない。書類作成費+証人代2名必要必要

多くの方にとって現実的なのは「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」です。

【実例つき】自筆証書遺言の正しい書き方とは?

法的に有効な自筆証書遺言の5つの条件

自筆証書遺言は「全文を自分の手で書く」ことが基本ですが、法的に有効と認められるには、以下の要件をすべて満たす必要があります。

  1. 全文自筆であること
  2. 日付が明記されていること(「令和5年5月27日」のように)
  3. 署名(フルネーム)を手書きすること
  4. 押印があること(認印でも可、実印が望ましい)
  5. 財産と相続人を明確に特定できること

書き方の具体例(テンプレート紹介)

以下は、一般的な自筆証書遺言の書き方のテンプレートです。


遺言書

私は、以下の通り遺言します。
1.長男〇〇〇〇(昭和〇年〇月〇日生)には、私名義の不動産(東京都〇〇市〇丁目〇番地の土地および建物)を相続させます。
2.次男△△△△(昭和〇年〇月〇日生)には、私名義の預金(〇〇銀行〇〇支店 普通口座〇〇〇〇)を全額相続させます。
3.遺言執行者として、長男〇〇〇〇を指定します。

令和〇年〇月〇日
東京都〇〇市〇〇町〇丁目〇番〇号
遺言者 山田太郎(署名)
(実印)


ポイント:

  • 曖昧な表現(「長男」だけなど)は避け、氏名と生年月日を記載
  • 財産も特定できるよう「住所・口座番号・名称」を記載

おすすめの用紙・筆記具・保管方法

  • 用紙:A4コピー用紙や便箋など、法律上の制限はなし。厚めの紙が望ましい。
  • 筆記具:黒のボールペン(消せるペン不可)。鉛筆・シャープペンはNG。
  • 保管:自宅でも良いが、2020年から法務局での保管制度を利用可能。

ここに注意!遺言書が無効になるNG例とその理由

ありがちなミス例

NGパターンなぜ無効になる?
ワープロやパソコンで作成全文自筆が原則のため無効
日付の記載が「2025年5月」など不完全正確な日が不明では効力なし
押印がない・シャチハタ使用印の有無が争点になる場合も
曖昧な表現(「子どもたちへ」など)誰に渡るのか特定できずトラブルに

これらは、裁判所で「無効」と判断される原因になります。

法的効力が失われるリスクとその結果

  • 遺産分割協議が必要になり揉める
  • 相続税の申告が遅れてペナルティが発生
  • 本来の意思が尊重されず不本意な分配になる

せっかく書いた遺言書も、形式が間違っていれば意味がありません。

法務局の「遺言書保管制度」を活用しよう

2020年7月からスタートした「自筆証書遺言の保管制度」によって、自筆でも安心して保管できる時代になりました。

制度の概要と対象となる遺言書

  • 対象:自筆証書遺言(法務省所定の様式に則る)
  • 方法:本人が法務局に出向き、書類とともに申請
  • 保管期間:遺言者の死後50年間

保管制度を利用するメリット

  • 紛失・改ざんのリスクがなくなる
  • 家庭裁判所での「検認」が不要
  • 相続開始時に内容を家族がすぐ確認できる

書くときに迷いやすい項目・記載例のアドバイス

財産の分け方の基本

  • 「平等」=全員に同じ額 → 現実的でないケースも
  • 「公平」=貢献度・経済状況などに応じて調整
  • 相続人の最低限の取り分=遺留分にも注意

付言事項の活用方法

遺言書の最後に「付言事項(ふげんじこう)」としてメッセージを残すと、相続人が遺言の意図を理解しやすくなります。

例:

「長男に多く遺すのは、これまで父の面倒を見てくれた感謝の気持ちからです」

プロに頼むべきか?自分で書くべきか?判断基準を解説

自筆で十分なケース

  • 相続人が配偶者と子どもだけ
  • 財産が預貯金や不動産など明確
  • 家族関係に大きな問題がない

専門家に依頼すべきケース

  • 子どもがいない・再婚など関係が複雑
  • 特定の人に多く相続させたい
  • 相続税や事業承継の配慮が必要

専門家(弁護士・行政書士・司法書士)に依頼すれば、公正証書遺言の作成やアドバイスが受けられます。

【Q&A】よくある質問まとめ

Q. ボールペンじゃダメ?

→ 黒インクのボールペン推奨。消えるボールペンや鉛筆はNGです。

Q. 夫婦で1通にまとめていい?

→ 1つの遺言書に2人以上の意思を記載すると無効になります。夫婦でも別々に作成してください。

Q. 書き直したいときはどうすれば?

→ 新しい日付で新たに書き直します。前の遺言書は破棄してください。

Q. 書いたことを家族に伝えるべき?

→ 必須ではありませんが、信頼できる相続人には場所や存在を伝えておいたほうが安心です。

まとめ:遺言書は正しく書けば「家族への最大のプレゼント」になる

最終チェックリスト

  • ☑ 全文を手書きで書いたか?
  • ☑ 日付・署名・押印はあるか?
  • ☑ 相続人・財産を具体的に記載したか?
  • ☑ 付言事項で意図を伝えたか?
  • ☑ 法務局での保管を検討したか?

遺言書は単なる法律文書ではありません。
あなたの想いと財産を、大切な人たちへ確実に引き継ぐための手段です。
トラブルを避け、円満な相続を実現するためにも、ぜひ一度、書く準備を始めてみてください。


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